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またやらかしました。

猫に弱いことは分かっていたし、猫と戯れていたら他が見えなくなることはあの事故で理解したはずなのに。

予鈴が鳴って猫とお別れして満足して振り返ると、どこか疲れたような顔でこちらを見るジャッカル君が。

一気に青ざめました。
折角友達になってくれた彼を放置して猫と遊び倒すなんて。

ちーちゃんはこの学校で私の相手をしてくれる唯一の存在で、昼休みはちーちゃんと戯れるのが習慣になってたんです。
ええ、言い訳です。すみません。

ジャッカル君に謝り倒すと、いい人な彼はすぐに許してくれましたが、私はとにかく落ち込んでいました。

身が入らないまま午後の授業を受けて、部活に向かうジャッカル君と別れ、今家に帰りました。


「ただいまー…」
「お帰り紗弥!!ああ、仕事中に愛しい娘の姿が見れるなんて自営業の特権だよな!!」
「あなた?娘もいいけど手元も見てくれるかしら?卵が焦げてるわよ」
「…お父さん、それ何度も聞いたよ。お母さん、私も手伝う」
「「だめ!!イメージが違う!!」」
「……」


私が唯一着飾らず素の私を見せることのできる存在が両親。
どんなに神聖なもの扱いされても、自分たちの娘として扱ってくれた。

ただ溺愛してくれているだけかもしれないけど。

一人娘に似合うものを与えようとなんでも準備する親バカぶりは呆れてしまう。

かなりの神奈川寄りだとはいえ東京にある我が家。
それにも関わらず頭のレベル、制服などを考慮し立海の入学案内を持ってきた時はどうしようかと思った。
本当は氷帝とかに入れたかったらしいが、金銭的理由で断念したらしい。
立海は私立ではあるが、母の母校で制服などの費用は免除。そして学年トップが条件の特待生制度で学費半額。なかなか安く済んでいる。

我が家は本当に小さな定食屋だ。味は美味しいが外観はお世辞にも綺麗とは言い難い。オフィス街の近くにあるというのに、お客さんはトラックの運転手やサラリーマンのおじさんのようなむさい人しかいない。


(手伝えば確実に売上あがると思うんだけど。使えるものは使わないと、って考えはないんでしょうね)


そんな定食屋は私のイメージには合わないと両親は手伝わせてくれないが、これから成績が下がる恐れがある私にしてみれば稼いでいてくれないと困るわけで。


(看板娘扱いしてくれて構わないんですけど…)

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