02
そんなことない、と必死に頭を振る白神さ…、紗弥を見て思わず笑みがこぼれる。
否定しているが紗弥の成績は柳を抜いての学年トップ。それなのに否定されても、普通は謙遜か嫌味にしかとられないだろう。
(でも、紗弥は本気で否定してるよな)
数分前までの紗弥の印象は、凜として誰も近寄れないオーラがある人だった。
それなのに、まだお互い緊張を含んだままの何度かのやりとりの中で、その印象は薄くなった。
こんなにすごいものをたくさん持っているのに、彼女には自信がない。
紗弥がすることを否定する人なんていないし、他人だったら受け入れられないことでも許される力を持っている。
なのに、目の前にいる彼女は、弱々しく俺を気遣いながら言葉を選ぶ。
俺を含む全ての人にとって特別な彼女。
しかし、紗弥にとって彼女自身は特別なんかじゃないんだろう。
だけど、そんな紗弥の考え方や優しさは、ただ今まで神様のように遠く神聖な存在だったことを覆すわけではなく、天使のような温かさまで与えた。
(やっぱり、俺なんかとどうにかなるような緩い存在じゃないな)
一番近い友達になれたら、なんて図々しい希望を持った。
キーンコーンカーンコーン
授業終了のチャイムが鳴った。
紗弥と友達になってから10分程度。
こんなに10分で温かい気持ちになることはないかもしれない。
昼休みを迎えた教室はいつも通りのざわめきを作った。
「紗弥、飯ってどうしてるんだ?」
俺の問い掛けに教室がシン…、となった。
クラス中が驚いた顔をこちらに向けている。
「…え、と。外で…」
外。そういえばこの学校には昼休みに中庭近くのベンチに近付くなという暗黙のルールがあった。
俺はいつもレギュラーと屋上か部室だし、関係ないとは思っていたが。
改めてこの学校が白神紗弥の妨害を決してしないよう徹底しているのがわかる。
「迷惑じゃなければ、だけど。一緒食わねえか?」
「え?でも、友達とか、一緒に食べるんじゃ…」
「別に約束してるわけじゃなくなんとなく集まってるだけだし、あっちはたくさんいるから大丈夫。今日は折角友達になったし紗弥と食いたいと思ったんだけど」
(やっぱいきなり頑張りすぎか?話す程度が現段階の俺の限界か?)
しかし内心緊張しながら伝えた言葉に返ってきたのは、優しい微笑みだった。
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