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(ともだち…友達、)


桑原君から言われた言葉が何度も頭の中を駆け巡った。

友達になろう、なんて。
昔の私なら笑ったかもしれない。
友達って自然になるもんじゃないの?って。


(でも、今の私には…)


誰もが一緒にいることを避けたがる私。
自分自身でもそれを理解しているからこそ、諦めていたこと。

…桑原君は、同情してくれたんでしょうか。それなら納得がいきます。


(友達がいない、なんて暗いことを言われれば誰だって)


先程の自分の発言に再び羞恥が襲い掛かる。

でも、同情ならそんな申し訳ないことはないですよね。
断りの言葉を言わなければ。
ほら、桑原君が無言で返事を待っている。


「……いい、の?」


あれ?私は今なんて言いました?断りの言葉を言わないと。こんな言葉だと、桑原君に気を遣わせてしまう…。

慌てて言い直そうと口を開いたが、桑原君の言葉の方が早かった。


「…っ!当たり前だろ!?いつでも気軽に話せて、頼ることができる存在になるから!!」


(…ああ、本当の私は誰かに縋りたかったのかもしれない)


必死に、でも笑顔で、私の疑問に“当たり前”と返してくれた目の前の彼。

今まで気にしてないと思っていたはずなのに、寂しさが溢れ、人の温かさを求めている自分にとても驚きました。



『紗弥ーっ、勉強した?』
『テストも今日で終わるしさ、今度の土曜は紗弥が言ってたショップ行かない?』
『白神ー、お前プリント出せよ!!寝てんじゃねえ!!』
『まったく、白神は抜けてんな!』
『中学卒業しても紗弥はこのまんまなんだろうねー』
『変わってたらびっくりだわ!!高校違っても絶対からかいに行くから!!』



そうだよ、なんで忘れてたんだろう。
なんで大丈夫だと思ってたんだろう。
私は、人の温もりを知っていたはずなのに。


(大丈夫、かな)


久しぶりだ。
友達って、どういう風に話すんだっけ?
間違わないかな、怖いな。

桑原君が与えてくれるのは同情かもしれないけど、それでもいい。

私は、“人”を思い出したい。


「……よろしく、お願いします。桑原君」

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