02
あれから3日程経った。
見事に白神さんと喋ることはないし、びっくりするくらい美しさが崩れることはなかった。
(完璧な人間って感じだな…)
その思いに変化があったのは、4限の授業でのことだった。
(………ん?)
もう授業も始まったというのに、彼女は珍しく落ち着かない様子で鞄の中を見ては溜め息をついていた。
(あ、なんか諦めたみたいな顔……。なんだったんだ?)
疑問を浮かべていると、教師が忘れ物を職員室に取りに行くと言って教室を出て行き、教室が少しざわめいていた。
広い校舎で、教室から職員室まではすくなくとも往復5分はかかる。
さっきの行動が気になっていた俺は、聞くチャンスは今しかないと感じていた。
(聞くか…?でも…、っ俺なんかが話し掛けたところでなんも影響なんてないはず……!!〜〜っよし、)
「っ、白神さん」
(うわ、声裏返ったし思った以上に声ちいせえ…!!)
ばくばくとなる心臓を無理矢理抑えていると、白神さんがゆっくりと振り返った。
(うわ……、やばい、綺麗……って、そうじゃなくて!!うわ、不思議そうな顔してる!!そりゃそうだ、早く喋んねえと……!!)
「ど、どうかしたか?」
「………え?」
(ちっげえ…!!何がかを言わなきゃ伝わんねえよ!!え?って言われたじゃねえか、そりゃそうだよ…!!)
「さっき、なんか落ち着かない感じだったから…」
(ああ、説明下手くそすぎるだろ……!!)
俺か頭の中で葛藤していると、白神さんは少しぽかんとした後、顔を赤らめた。
(ああああほら、顔赤くして困ってるじゃねえか可愛い、……って、顔赤く…?)
「あの、教科書忘れちゃったみたいで…、どうしようかなって思ってたの、見られちゃってたん、ですね」
照れたように笑う白神さんを見て、今度はこちらがぽかんとする側だった。
(え、え?教科書?それであんなに困った顔してたのか?っていうか、白神さんでも忘れ物とかするのか)
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