01
『今日は席替えするからなー』
なんて担任の言葉に、クラス中がざわめいた。
喜びと、多少の怯え。
理由は簡単だ。
俺らのクラスには、
あの“白神紗弥”がいる。
入学式の首席挨拶の瞬間から、学校中が彼女を羨望の眼差しで見ていた。
まるで、異質な人間。
そう思えるほどに彼女は美しかった。
近寄ってはいけないものとされ、誰もが彼女を遠巻きに見つめた。
先日のクラス替えで、中学最後のクラスに彼女がいた。
クラスの大半が、彼女を見れる幸せを感じながら、自分なんかが近付いてしまったら…という思いに駆られていた。
クラスが同じだけでそうなのだ。
席が隣になりでもしたら、緊張で生きた心地がしないだろう。
今日までは彼女は窓際の一番後ろの席に座り、周りの席になっていた奴らはびくびくしながら過ごしていた。
その役目が、自分に降りかかるかもしれないと思うと、誰も手放しには席替えを喜べなかった。
『ほら、くじ引けー』
担任の促す声に、俺もくじを引いた。
(…っと、32番か)
番号の書かれた場所だけを確認し、俺は机を運んだ。
(………え、)
思わず目を見張った。
隣の席には、白神さんがいた。
(窓際一番後ろ…って、もしかして同じ席だったのか?ていうか隣……!?嘘だろ……)
焦る気持ちで一気に心拍数が上がったが、すぐに冷静になった。
(まあ、前隣だった奴らもほとんど関わってなかったし、俺なんかが多少関わったところで間違いがあるはずもないし大丈夫か…)
あいつらだったら変な感情の持ち合いがあってもおかしくないけど、と、部活仲間の顔を思い浮かべながら前に向き直った。
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