04
『あ、あの!!白神様!!お、お荷物、お持ちします!!』
「……大丈夫ですよ」
ああ、上手く対応できなくてごめんなさい。
小学校に入学したくらいから、私の周りに人はいませんでした。
人よりちょっと可愛い子だったら人気者になれたかもしれないけど、私の容姿は小学生にも近付いてはいけないものと判断させたようです。
遠巻きに、遠巻きに大事にされました。
だから私は、数年間まともに同級生くらいの方と喋った記憶がありません。
話し掛けられても、冒頭のような言葉。
おかげさまですっかり会話の仕方を忘れました。
この容姿を得て14年。
私には荷が重すぎます。
なんて言いますか……
絶世の美女って言葉が似合うと言うか。
ああ、すみません。
表現する語彙力なんて持ち合わせていないんですよ。
美しいものなんてね、遠目で見るのが一番なんです。
近寄って汚したくないし、比べられるのも嫌だし。
私がこの容姿の中身なんておかしいでしょう。無理ですよ、どうすればいいんですか。ごきげんようとか言えばいいんですか。中身こんなんですよ、気持ち悪いじゃないですか。
会話をする機会はないし、あってもどうすれば期待に添えられるのかわからないし。
ついつい無口になるってもんです。
心の中ではごちゃごちゃ喋っていますけどね。
寂しくないと言えば嘘になりますが、仕方ないと思っています。
だって私もこんな容姿の奴に近付く勇気ありません。
私は可愛いのに
『そんなことないよー』
なんて馬鹿なこと言う女じゃないです。
だって綺麗なんですよ、ナルシとかじゃなくて。
まあ、着ぐるみとかそんな感じで、自分の体を他人だと思っているから言えることなんでしょうけど。
だから遠巻きに見られても傷つきもしないし当たり前だと思っています。
そんな感じでいろいろ諦めて、私はあと1年の中学生活を過ごしたいと思います。
ああ、そういえば中学に入ってわかったのですが、ここは漫画の世界のようです。
立海大付属中学
なんて入学案内を見た時にはこれ以上厄介ごとが増えるのかと憂鬱になりましたが、なんてことなかったです。
彼らも当然の如く私を避ける一人でした。
関わらなければどんな漫画のキャラクターであろうと関係ないし、私の世界に生きる他人でしかありませんから。
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