03
ざわ…………
『ほら、白神様よ』
『今日も美しいわ…』
『一度でいいから、あの方と話してみたい』
『俺らなんかが白神様の視界に入れるわけないだろう!彼女の視界を汚しちゃいけないんだ!』
「………」
もう苦笑いしかでませんね。
そこの男性、しっかり声も姿も入ってきていますよ。
まあ、みなさんの気持ちは充分理解できますが。
少々昔のことを思いだしながら登校してきましたが、何度この状態になっても慣れるものではないです。
前世の記憶は、私の中からなくなることはありませんでした。
不思議に思いながら、まあいいかと大したことではないと考えていました。
私の問題はそこにはなかったのです。
言葉を話せるようになってきた頃から、私は自分自身に違和感がありました。
鏡を見たり、公園などで話し掛けられたりして感じたこと。
私の容姿が随分良かったのです。
3歳頃は、まあ小さい頃可愛い子なんてよくいるし。と感じながら、『可愛いわねえ』なんて近所の奥様方から言われる褒め言葉も受け流していました。
しかし、年長頃からおかしいと感じ始めました。
歳を重ねても可愛い子なんて、ほんの一握りなんです。
普通は歳をとるにつれて顔の造りは変わって大抵の子供は普通の子になります。
それなのに、鏡に映る私は綺麗すぎました。
過剰評価でもなんでもありません。
私の前世は極々普通の子だったんです。
友達と雑誌を見ながら、
『このモデル可愛くて羨ましい』
『うちらがこんな顔になるには整形しないと無理だわ』
なんて笑いながら話していたくらいです。
でも、鏡に映る自分は5歳児のくせに可愛いより綺麗が似合っていて、ぶっちゃけ今までこんな容姿の子供は見たことがありませんでした。
そこからは焦りました。
前世の“普通の子”の記憶を引きずる私には、綺麗な子の立ち居振る舞いなんて全くわかりません。
『可愛い』と囃し立てていた大人も、何か神聖なものを見る目で私を見ていました。
それを不快に思うこともありませんでした。
なぜなら私も他人だったら同じ行動をとっていたと思うからです。
それくらい、私は綺麗でした。
そのまま成長し、私は今中学3年生。
前世で死んだ時と同じ歳になりました。
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