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「#幼馴染」のBL小説を読む
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思い出したこと [ 8/13 ]


「えーっと、仁王さん?」
「雅治でいいぜよ、奈々香」
「私、仲良くしたいと思った人を下の名前で呼ぶんですよね」
「…ひっどいのう」
「あはは、嘘ですよ。よろしく、雅治」


雅治に選んでもらった大量の下着を購入した後、連れられて入ったのは綺麗なカフェだった。窓際の席について何気なく交わしたのは簡単な自己紹介。


「え、中2?」
「おん」
「うわ、高校生なんだと思ってた」
「そういう奈々香も、中2にしては大人っぽいんじゃなか?胸もでかいし…」
「……普通の中学生男子は、そういうの恥ずかしがるもんじゃないの?」
「逆じゃろ、真っ盛り」


…絶対違うと思うけど、そうなのかなあ…?少なくとも私がいた世界の男の子たちは女子に直接的なそういう話する子はいなかったんだけどなあ。


「神奈川かー…」
「奈々香はどこなんじゃ?」
「秘密。もっと仲良くなることがあったら教えてあげる」
「ミステリアスな女は嫌いじゃなかよ」
「ふふ、それはどうも」


発言全てが今まで出会ってきた中学生男子じゃないよなあ…、と苦笑する。


「制服ってことは、今日は学校?」
「いや、部活の練習試合に東京に来た帰りじゃけえ。折角東京きたし買い物でもして帰ろうかと思ってのう」
「あ、部活してるんだ?何部?」
「テニス部じゃよ」
「へえ……」


何も考えずに頷いてからその言葉にひっかかりを覚えた。


(…テニス部?)


…あの漫画、テニプリって…なんだっけ。確か、テニスの王子様、の略…?ってことはテニス漫画だよね。そうだよ、亮もテニス部だって言ってた。もしかしてだけど、雅治もキャラクター…?


「奈々香?」
「え、ああごめん。知り合いも東京でテニス部って言っていたから、もしかしたら知ってるかもって考えてた」
「ほう、どこの学校?」
「えっと、どこだっけ…?ああ、氷帝ってところなんだけど知ってる?」


昨日の夜亮から聞いた話を思い出しながら言葉を続ける。


「氷帝?」
「うん、やっぱ県外だと知らないよね?」
「知っとるもなんも、今日の練習試合の相手ぜよ」
「……え?」


雅治の口から発された予想外の言葉に思わず聞き返してしまった。私は漫画は詳しくないけど、亮と同じ学校だったあの泣き黒子の人の目立ち方を考えるときっと強い学校なんだと思う。


「まあ、うちが勝ったけどのう」


ああ、どうやら雅治もキャラクターってことで間違ってないみたい。


「奈々香?どうかしたんか?」


雅治から声をかけられてもなんて返したのかはっきり覚えていない。ただひたすら思ったことは、かおりの言うことをもっとしっかり聞いておけばよかったということだけだった。




――――――――――――――――


「すげえ…!」
「あ、おかえりなさい。もうすぐ食べれるから準備してきて?」
「奈々香!もしかしてこれ全部奈々香が作ったのか!?」
「え?うん、そうだけど…」
「こんな食事、跡部んちでしか見たことねえ…!」


部活が終わって帰宅して、見慣れない靴が玄関に置いてあったことで奈々香がいることを思い出した。少し緊張してダイニングの扉を開けると、それまでの緊張なんて吹き飛ぶくらいの信じられない光景が目の前に広がっていた。

昨日の会話から奈々香は料理が上手いんじゃないかとはなんとなく思っていた。だけど中学生の料理ができるなんてたかが知れてるだろ。だけど目の前のテーブルに並ぶのは、一般家庭では決して見ることのできないような綺麗に盛り付けられた料理の数々。


「1人前300円もかかってないからお金の心配はいらないよ、2人分だと節約できるからいいよね」
「は…?」
「味も異世界に味覚の差がなければ大丈夫だと思うんだけど」
「え、は?」
「ほら、食べよ?」


ふわ、と笑って促されるまま、俺は席について手を合わせた。


「えっと、…いただきます」


奈々香がにこにこしながら見つめてくる視線から生まれる照れをごまかすように、目の前の料理を口に運んだ。


「…っ!うめえ…っ!」
「やった」
「っ、」


今までの大人っぽい表情が急に崩れて無邪気に笑った奈々香に、自分の顔が熱くなったのがわかる。慌てて奈々香から視線を逸らして疑問を口にした。


「…奈々香って、何者?」
「何者…って?」
「だってこんな料理、中学生でできる奴みたことねえ…!」
「あはは、うーん。これでも向こうの世界では、名の通った料理人だったりします」


ふふ、といたずらっぽく笑う奈々香の言葉に、ぽかんと口を開いた。


「…いや、だって中学生だろ…?」
「料理に年齢は関係ないもん。小さい頃からコンクールとか出て、今はお店の経営してたりしてます」
「まじ、かよ…。俺もしかしてとんでもなく贅沢な条件だしてた?」
「自分が得意なことを条件にしてもらえるなんて申し訳ないくらいだよ。1ヶ月、期待しててください」
「はは、そっか。楽しみにしてる」


談笑しながら堪能した食事は、本当にどれも味わったことがないくらい美味しかった。




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