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時には素直に 年末年始企画
「じ…ん…」
「…あ?」
「葵ちゃんたらね、お店手伝ってくれてたんだけど様子おかしいなって思った瞬間高熱で倒れちゃって」
お店の奥で寝てるから見ててあげて、などふざけたことを吐かしたババアに返事もせずに奥へと進むとそこには真っ赤な顔をして布団に包まっている葵の姿。
「…何やってんだテメェは」
「わ…か、ない」
わかんない、ってなんだ。呆れて溜め息をついて隣に座る。
「仁…、お腹すいてる、よね…?」
「すいてねえ」
「嘘。お腹すいたからお店来たくせに」
段々覚醒してきた葵が潤んだ目で立ち上がろうとした。
「…おい、」
「なに、〜〜っ!!」
急な頭痛が走ったのだろう、しゃがみこんだ葵の肩を押して布団に戻らせる。
「馬鹿か」
「うー…、だって」
「だってじゃねえ。大人しく寝とけ」
溜め息をつきながら葵の額を手の甲で軽く叩くと、手首を弱々しく握られた。
「あ?…何やってんだ」
「仁、どっかいっちゃう…?」
思わぬ葵の発言に固まった。こいつのことは昔から知っているが、こんな弱々しい発言をする奴じゃなかったはずだ。そうでもなきゃ俺と一緒にいるなんてできねえ。
「…何言ってんだテメェは」
「仁がどっか行っちゃう夢、見た」
…熱にうなされてんのか。
「……行かねえよ」
「うん。…へへ、仁の手、冷たくて気持ちいいね」
ふにゃ、と笑って葵はそのまま目を閉じた。
(…くそ、調子狂う)
弱々しい力で握られた俺の手は葵の額に乗ったままで。振りほどくことは簡単なはずなのになぜかできない自分に腹が立つ。
「仁ー…って、…あんた何やってんの?」
「っ、俺じゃねえ!!」
「はいはい。あんた達早く付き合っちゃえばいいのにねえ。葵ちゃんが娘に来てくれたら楽しいのに」
「寝ぼけたこと言ってんじゃねえ!!」
「そんな怒鳴ったら葵ちゃん起きちゃうでしょ。水置いとくから起きたら飲むように言ってね」
笑いながら去って行ったババアを睨みつけた後葵の方を向く。
「…俺にいてほしいとか、本心で思ってんのかよ」
自分がぼそりと発した言葉が気持ち悪くて頭を掻きむしる。むしゃくしゃする気持ちを舌打ちにぶつけてテーブルに置かれた水に手を伸ばす。
「お前が悪い。文句なんて言わせねえからな」
勢いよく水を口に含み、葵の髪を荒く掴んで顔を近づけた。
熱が下がって目が覚めたら、いつも通りのお前から、本心を吐き出させてやる。
『あれ?優紀ちゃん、今日は仁来ないの?』
『仁珍しく熱出して家で寝てるのよ』
『ええ!?…この間移しちゃったのかな!?』
『…自分から移ったんじゃないかしら』
『何か言った?』
『んーん、なんでも』