「猫ちゃん、名前つけてもいいかなあ?えっと…ちーちゃんとか!」 『ミャ?』 「ほら、茶色いし、ちっちゃいし!どっちも“ち”ってつくでしょ?』
なんで?という視線を送られて説明すると、次はじとっとした視線を送られた。
「え、だめ?…私前世からネーミングセンスないって言われてたんだよねえ…」
その視線に耐え切れず落ち込んでいると、頬に温もりが伝った。
「え?」
驚いて顔をあげると、そこには頬擦りしてくれる猫ちゃんが。
「も、もしかしてちーちゃんでいいの?」 『ミャッ』 「うわあっ、ありがとうっ!」
思わずぎゅっと抱きしめると、ちーちゃんは嫌がりもせず頬を舐めてくれた。
「…ちーちゃん、私と友達になってくれる?」 『ミャー』 「あはは、ありがとう!…実は生まれ変わってから初めてのお友達なの」 『ミャー?』 「どこに行っても同じって思ってたけど、ちーちゃんに出会えたから立海に来てよかった!!これから、よろしくねっ!」 『ミャッ』
ふわふわと毛を撫でると、何度も擦り寄ってくれた。
―――――――――
「…茶色くてちっちゃいからちーって、…っ」 「う…、笑い堪えなくてもいいよ?ジャッカル君」
お昼のふとした会話で、ジャッカル君からちーちゃんの名前の由来を尋ねられて出会いを説明した。
まあ、前世云々はもちろん省きましたけど。
そして今、すごく笑われています。
「わり、名前がそんな単純な名前の付け方するとは思わなかったから。なんつーか、意外で…っ」 「やっぱり、変だったかなあ…?」
自分のネーミングセンスのなさは重々承知してます。前世から何度笑われたことがあるかわからないですし。
でも、パッと“ちーちゃん”って浮かんだんだもん…。
「違う違う。意外だったけど、親近感湧くんだよなあ」 「…親近感?」 「ああ。それに、ちーのイメージにも合ってるし。ちーも気に入ってるよな?」 『ミャー』 「ほんと?…なんか嬉しいね、ありがとう」
ジャッカル君の言葉とちーちゃんの肯定するような鳴き声に照れ臭くなって笑みがこぼれる。
「しかし…。そっか、2年間ちーが名前の相手してたんだな」 「うん。ちーちゃんがいたから、すごく寂しいって思わなかったんだと思う」 「…ちー、名前と仲良くしてくれてありがとな」 『ミャー!』
誇らしそうなちーちゃんに、ジャッカル君と顔を見合わせてクスッと笑う。
ふわふわの毛を2人で撫でながら、幸せだなあと思う。
どこに行っても関係ない、ずっと一人だからと思ってこの学校にきた2年前のあの日。
こんなに幸せで温かい環境で毎日を過ごす日がくるとは思わなかった。
(私と出会ってくれて、支えてくれてありがとう)
じゃれ合うジャッカル君とちーちゃんを見て思った気持ちは、いつかまた伝えたいです。
prev next
|