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01


近所の小さい神社。小さいとは言ってもこの日ばかりは混雑するこの場所に、ぽっかりと円のように人がいないスペースがあった。


「紗弥…?」


その円の中心に一人ぽつんといたのは、俺の良く知る友人で、改めてそのすごさを思い知らされた。


「え?…ジャッカル君?」
「よっ」
「わ…えっと、あけましておめでとうございます」
「お。おめでとうございます…って、なんか違和感あるな」


改まっての挨拶に気恥ずかしくなって2人で顔を見合わせて笑う。


「紗弥は一人…なのか?」
「ううん、両親と来てるんだけど、お店のお客さんに会ったみたいで話しこんでたから抜けてきちゃった。…ジャッカル君は?」
「あー、テニス部の奴らと一緒なんだけどな。ブン太のパシリで屋台に買い物」


ほら、と大量のビニール袋を掲げると、紗弥はおかしそうに笑った。


「でもなあ、ここで待っとけっつったのに全員いなくなってんだよ」
「あはは、私がここに来てからしばらく経つけど見てないよ?」
「あー…まじか。…この人混みだから携帯も通じないんだよな。多分着信なっても気付かねえし」
「小さな神社なのに人多いよね」


一度はぐれたら簡単には会えないだろう人混みと、そんな状況なのに断りなくいなくなったあいつらにうんざりして溜め息をつく。

携帯を開き着信がないことを確認したところで隣から声がかかった。


「ん?」
「ジャッカル君もうお参りしちゃった?」
「いや、まだだな」
「私もなの。よかったら丸井君達待ってる間一緒に行かない?」


今空いてるし、と紗弥が指差す方を見ると、確かに人が少なくなっている。


「…行くか」
「うんっ」


嬉しそうに頷く紗弥に釣られて笑いながら足を動かす。

賽銭箱の前について一連の動作をして手を合わせる。


(去年は、ありがとうございました)


部活はいい結果を残すことはできなかったが、3年間の中で間違いなく一番得た物が多い1年だった。

それと……


(紗弥とも出会えた)


こんなに大切な友人ができるなんて思ってなかった。

テニス部の奴らにも紗弥にも、出会えて本当によかった。


(大事な出会いを、ありがとうございました)


そして今年も、みんなで笑っていられますように。


もう一度頭をさげ、ゆっくりと目をあける。ふと隣を見ると、白い手を合わせ目を閉じる紗弥がいて、長い睫毛や凛とした姿勢に思わず息を呑んだ。


(…ほんと、ふとした瞬間に紗弥がこんな綺麗な奴だって自覚するんだよな)


そんなことを考えていると、ゆっくりと瞼があがり微笑んだ紗弥と目があった。


「ごめんね?お待たせしました」
「え?あ、いや。全然…」


発された声にはっとしていると、紗弥はふんわりと微笑んで戻ろうかと提案した。



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