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「なんか、紗弥と居れば居るほどイメージ変わるんだよな」


お開きになってからの帰り道、俺は紗弥と二人で歩いていた。


「イメージ…?」
「紗弥が真田に雪玉ぶつけるなんて、誰も想像してなかったと思うぜ?」
「…だってみんな本当に楽しそうだったんだもん」


あはは、と苦笑する紗弥に俺も思い出して笑う。


「あ。…ねえ、ジャッカル君?」
「ん?なんだ?」
「えっとね、…これ、クリスマスプレゼントです」


そう言って差し出された綺麗な紙袋に目を開く。


「え…?だって、さっきクッキー…」
「みんなの分プレゼント買う余裕はなかったから…。でもね、いつもお世話になってるジャッカル君にはちゃんとプレゼント渡したいなって思って」


柔らかく微笑みながらプレゼントを手渡してくる紗弥からプレゼントを受け取って紙袋の中を覗くと、温かそうな手袋が入っていた。


「本当にいいのか?」
「うん。ジャッカル君に使ってもらいたくて選んだんだもん」


そんなことを紗弥から微笑みながら言われて、嬉しく思わない奴なんているわけがない。


「ありがとな」
「どういたしまして!…ジャッカル君だけにしかあげれなかったから…。みんなには内緒ね?」
「〜〜っ!!」


口元に人差し指を当てて悪戯に笑う紗弥に思わず顔が熱くなる。それをごまかすように、俺はポケットを漁った。


「紗弥」
「え?」
「…俺からも、プレゼント」


目を見開いた紗弥に苦笑しながら、小さな包みを手渡す。


「…ネックレス……?」
「さっき渡しそびれたっつーか、2人の時に渡したかったっていうのもあるんだけどよ。…安物だし、女が好きなものとかわかんなかったから、紗弥に似合いそうだなって思ったもの選んだんだ。……受け取ってもらっていいか?」


だんだん恥ずかしくなってきて視線をさ迷わせていると、名前を呼ばれて紗弥の方に視線を戻した。


「〜〜っ、」
「すっごく嬉しい…っ、本当にありがとう」


目に飛び込んできたのは、今日一番の笑顔を浮かべる紗弥の姿だった。


「こんなに楽しいクリスマス、生まれて初めてだったの。それだけで充分プレゼントだったのに、ジャッカル君から選んでもらったプレゼントをもらえるなんて、本当に幸せだね」


そう言って笑う紗弥に、その言葉が俺を幸せにすることなんて想像もつかないんだろう。


(幸せな1年、だったよな)


ゆっくり歩きながら思った気持ちの中に、温かいような寂しいような感情が渦巻いていた。



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