09
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さっきまでの盛り上がりが嘘のように静まりかえった俺達は、ただ呆然と動けずにいた。
真田の投げた雪玉は紗弥の頭へと当たり、紗弥はそのまましゃがみこんだままだ。
「……真田?」
幸村の低い声に全員が肩を揺らし、ようやく動けるようになった俺は紗弥の元へと走った。
「紗弥っ!!大丈夫か!?」
「紗弥先輩!!」
「白神、無事か?」
俺の後に続いて他の奴らも走ってきたが、紗弥は顔をあげなかった。
「白神さん、怪我はない!?」
「す、すまなかった…!!」
幸村と真田もやってきたが、真田の異常なうろたえ方は正直見てられなかった。
紗弥に視線を戻すと、微かに肩が震えているのがわかった。
(…泣いてんのか!?)
「紗弥!?当たり方そんなに酷かったか!?怪我とか…」
焦って声を出した時だった。
「〜〜っ、も、だめ…っ、」
そんな声が聞こえた後、紗弥の笑い声が響いた。
「「「……は?」」」
「雪合戦に必死になってるみんなが面白すぎて、一生懸命笑うの我慢してたのに、雪玉ぶつけられちゃうんだもん。面白すぎてわけわかんなくなっちゃった」
紗弥は笑いすぎてほてった頬と目に涙を浮かべた表情で顔を上げた。
「真田君?」
「な、なんだ…?」
「…えいっ」
ポスッ
紗弥の声と共に響いた小さな音に驚いて顔をあげると、肩に雪がついたまま固まる真田と、悪戯が成功した子供のように微笑む紗弥の姿。
「これでおあいこ、ね?」
にっこり笑った紗弥に、俺らが吹き出すのに時間はかからなかった。
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