07


「それじゃ、入るかのう」


ドアノブに手をかけた仁王に続き、俺らも扉の前まで進んだ。


「メリークリスマス、俺ら。じゃな」


仁王が発した言葉に疑問が浮かんでいるうちに、ガチャリ、と音を立ててゆっくり開いた扉の向こうを見て思考が停止したのはきっと俺だけじゃない。


「〜〜っ、やっぱり、恥ずかしいよ。仁王君…」


そこには真っ赤になった頬と同じくらい赤い服に身を包んだ紗弥がいた。


「……ほう、ミニスカサンタがこんなに破壊力があるとは予想外じゃった」


なんでお前はそんなに冷静なんだ、と叫びたかったが仁王の顔も赤くなっているのを見てやめた。というより、声がまともに出そうにない。


「あ、はは…。仁王君から貰ったプレゼント、なんだけど…似合う…かな?」


紗弥の困ったような言葉に、俺らはただ頷くしかできなかった。




「最初は恥ずかしかったけど、慣れちゃったら楽しいね」


笑いながら話す紗弥に俺らが全然見慣れていないことは理解してもらえるんだろうか。

私服の時もかなりの衝撃だったが、これはそんなものの比じゃなかった。


「…紗弥先輩、めっちゃ可愛いッス…」
「本当に仁王はとんでもないことをしてくれたよね」
「あそこまで着こなせるとは予想外じゃった」
「もう俺、直視できねえんだけどどうしてくれるんだよぃ」


全員が部室の隅に集まってコソコソしてる姿はきっと異様だろう。…紗弥は全く気にしてなさそうだが。


「あ…」


紗弥の小さな声が聞こえて全員が振り返る。…ああくそ、可愛い。


「紗弥、どうかしたか?」
「あ、えっとね…」


紗弥は持ってきた鞄の中を覗いて、何かを手にしてにっこりと笑った。


「ずっとタイミング逃しちゃってたんだけど、折角こんな格好させてもらっちゃったから」


小さな袋を顔の近くまで運んで、照れたように笑った。


「メリークリスマス、ってことで。私からのプレゼントです」


みんなから貰ったプレゼントとか、豪華な料理食べた後だから出しにくいんだけどね?

そう言って微笑んだ紗弥の手には美味しそうなクッキーの入った袋があった。


「丸井君のお菓子に比べたらほんと味も見た目もだめなんだけど、よかったら食べてください」


そう言いながら一人ずつ手渡されたクッキーは、つまり紗弥の手作りってことで。

正直、ここにいる奴らにとってブン太のお菓子の何倍も価値があるものだということに紗弥は気付いていないんだろう。


せめて全員が顔を綻ばせていることに気付いてほしいと思う。


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