06


次々に紗弥に渡されるプレゼントを呆然と見守る。

打ち合わせもしてないのに、こいつらいつの間にプレゼントなんて用意したんだ?


「白神、俺からはこれだ」
「?…あ、匂い袋?」
「ああ。俺が愛用している物と同じ物だ」


「私からはこれを」
「…すごく高そうなハンカチだよ?」
「一目見て貴女に使っていただくのが一番似合うと思ったんです」


「俺は…これだ」
「…書道?」
「立海テニス部のレギュラーには俺が書いた書を渡している。その…、白神も仲間のようなものだと思っているのでな」


次々と渡されるプレゼントを、紗弥は困惑しながらも笑顔で受け取っていた。


(…全員、考えていることは一緒なんだろうな)


自分の趣味を共有してほしい。
自分が作ったもので喜んでほしい。
自分との時間を作ってほしい。
自分と同じ香りを纏ってほしい。
自分が選んだものを身につけてほしい。
自分達と、同じ立場にいてほしい。


全員、独占欲を剥き出しにしていることに気付いているんだろうか。

ぼんやりと考えていると、一番厄介な男を一人忘れていることに気付いた。


「あっまいのう、おまんら」


その声に振り返ると、そこにはにやりと笑って大きめの紙袋を掲げた仁王がいた。


「白神サン、知っとる?俺の得意なこと」
「得意なこと…?」


首を傾げた紗弥をククッと笑うと、紙袋を渡した後紗弥の耳元に口を近付けて俺らを部室から追い出した。


「おい、仁王?紗弥一人で残して何やってんだよぃ?」
「お前さんらは甘いんじゃ。折角のクリスマス、今を楽しまんでどうする」
「意味わかんねえッス」
「喜ぶのは白神サンだけじゃなくてええっちゅうことじゃ」


笑ったままの仁王に全員が首を
傾げていると、少しだけ開いた部室の扉から紗弥が顔を出して仁王を呼んだ。

ドアを挟んでボソボソと喋る2人の声は全く聞こえないが、もう一度ドアが閉まる時に仁王の満足そうな笑顔が嫌に頭に残った。



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