08


ショッピングモールの中を暫くうろうろした後、時刻は午後6時になろうとしていた。


「そろそろ帰り始めないと遅くなるな」
「ほんとだ…。この時期って暗くなるの早いよね」


ショッピングモールから出ればもう外は暗くて、冷たい風が吹いていた。


「寒くないか?」
「うん、平気」


風が当たって少し赤くなっている顔で笑う紗弥に俺も微かに笑う。


(特別何かしたってわけじゃねえけど、楽しかったな)


一日を思い出しながら足を進めていた時だった。


「うわあ……っ」


隣から聞こえた声と、似たような歓声が周囲からも起こって顔を上げた。


「すごい、綺麗…」


そこには、目の前に広がる並木道が、見事にライトアップされた光景が広がっていた。


「すげえな…」
「綺麗だね!!6時から点灯だったんだあ…」


腕時計がピッタリ6時を示しているのを見て、紗弥は嬉しそうに声をあげた。


「そっか…、ハロウィン終わったからクリスマス一色になるんだね」
「あーなるほど。だからライトアップなのか…」


目の前の並木道を見つめて目を輝かせている紗弥に思わず笑った。

ライトアップされたこの光景に異常なくらい似合う紗弥の姿を見るとやはり少し緊張するが、隣にいる紗弥はそんなことはお構いなしに子供みたいに無邪気に喜んでいる。


「…この道、通って帰るか?」
「え…、いいの?」


並木道を通ると、本来遠回りになる。でも、


「こんなに喜んでもらえるなら、遠回りくらい安いもんだろ?」


それに、そんな紗弥と一緒にいるのが楽しいからな。


俺の言葉に嬉しそうに微笑む紗弥の頭を軽く撫でながら、俺はそんなことを考えていた。


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