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「…雅、なにしてるの」


突然の衝撃に眉を潜めつつ振り返る。
ってか、部活の人達こっち来ちゃってるじゃん。


「…仁王、すぐにわかると言ったのはこういうことか?」
「正解ぜよ、参謀」
「しかし、まだ理解はできていない。説明してくれないか」


私を挟んで会話しないでほしい。
この人、柳君だっけ?


「透を呼んだのは幸村に忠告してやろうと思うての」
「忠告…?」


忠告…ってなんだ。
まず私もなんでここに呼ばれたかもわからないんだけど。


「のう、幸村」
「っ、な、なに…?」
「透とここまで来れて楽しかったか?」
「え、あ、うあ…」


(あ、やばい)


雅の考えを理解した人なんて、多分私くらいだ。


「幸村、透は俺のじゃ」


信じられない程の強さで抱かれた肩がギシギシと悲鳴をあげる。

目を見開いた幸村君と、冷静に雅を見つめる柳君と、後は誰か知らないけどみんな驚いた表情をしている。


「…雅、痛い」
「だからなんじゃ?」
「離して」


そういうと雅はクツクツと喉を鳴らし更に力を強めた。

流石に限界だ。


「のう、透。お前さん、先週何しとったんじゃ?」
「先、週…?」
「俺が大嫌いな雷の中一人でおるのに、約束の時間にも来んかったのう?」
「だから、あれは電車がー…っ」
「その電車の中で幸村と手ぇ繋いで仲良くお喋りじゃと?俺が一人でおるのに、お前さんは知らん男と仲良くしよったんじゃな」


雅の言葉に目を見開いて幸村君の方を向いた。
幸村君も他の人も、わけがわからないと困惑しているのが見えた。

…面倒なことを……っ


「…どうすればいいの」
「流石透じゃ。馬鹿な女みたいに言い訳も無駄な謝罪もせん。……よお躾られとるの」


ニヤリと笑いながら頬を撫でる雅に、ため息が漏れそうになるのを必死で堪えた。


「ここでキスしんしゃい。透から、こいつら全員の前で」
「……は?」
「透が俺のもんじゃと、教えらないかんじゃろ?」


飄々と言ってのける雅に、苛立ちながら顔の方向を変えた。

勢いよくジャージの襟元を引っ張り雅の頭を下げさせた。


「「「――〜〜っ」」」


周りの息を呑む音が聞こえたが、関係ない。
何より自分の身が大事なのだから。


ゆっくり目を開けた時、呆然とした幸村君と目があった。