メモ

色々なものが置いてあります


::櫂アイで六兆年パロ そのいち

これは遠い遠い時代の

古い古いおはなし

カミサマだけが知ってる

とても懐かしい物語














「――ねぇ、キミの願いはなに?」

なんのことだろうか?
目の前には少女が立っていた。にっこり。笑った顔。意味が分からない。

「まだ願わないの?」

……何を?

「僕に何か願わないの?もう十六歳なんだから、いろいろあるでしょ?願い事、たくさんあるでしょ?」

――あぁそうか、これはいつもの夢だ。コイツが出てくる、何度も見た夢。

これで七度目か。

「だから夢なんかじゃないってば。何回言わせる気?僕はこうしてずっと待ってるのに、どうして願わないの?待つの、いい加減飽きるんだけど」

よく分からないが、なんだか怒っているようだ。

「あっ、僕は子供じゃないから怒ったりしてないよ?本当は飽きたりもしてないし、別に――……」

アイツの声が止まり、下を向く。

「……別に、寂しいとか思うわけないし……」

なにが言いたいのだろう。
アイツが顔を上げた。

「ねぇ、欲しいもの、ないの?あるよね?」

そっちの方こそ求めているような顔だ。なぜ【願い】を求めている。どうしてかなんて、知らないがな。

「なんでも叶えてあげるよ。だからほら――……願って?」

アイツの手に、箱があらわれる。色とりどりの、たくさんの箱。

「まちがえた過去をやりなおしたい?まちがえないよう未来が知りたい?平和に暮らすことを許されたい?許せない人に復讐したい?最強無敵のヒーローになりたい?不老不死の魔法使いになりたい?……なんだって叶えてあげる。どんな願いも叶えてあげる。それとも」

それとも、と、アイツは笑う。

「それとも、幸せになりたい?」

…………。

「――?どうして首を振ってるの?欲しいもの、ないの?」

……そんなもの、ない。何も。

「どうして?幸せになりたくないの?」

不安そうに問いかける。
だが俺には幸せが何かが分からない。だから欲しいものなんて何も無い。何も。

「じゃあ僕は役に立てないの?願いを叶えられないの?僕が願いを叶えられるのは×××の××だけなのに――……」

なにを言っているのだろう。聞きとれない。

「…………っ」

アイツは唇を噛んだ。

「僕は諦めないよ。僕は待ってる。忘れないで、覚えていて。僕はふるいおうちで待ってるから。誰もいない夕暮れで、ずっと待ってるから。だからきっと会いに来て」

きっと、願いを叶えてあげるから。
 

2013.12.29 (Sun) 12:32

back


prevtopnext