いつまでも (194ページ)
噂で幕府軍が滅ぼされたと聞いた。新選組は、千鶴は無事だろうか。鬼だから簡単には死なないといえど、彼女はただの女子だ。一応、剣術を心得ているとは言え、人を斬ったことなど無い。そもそも、刀が銃に敵うはずがない。刀が届く前に銃で撃たれてしまう。たとえ傷がすぐに治るといっても痛いものは痛い。ごめんなさい、最期まで守って挙げられなくて。ごめんなさい、千鶴。
二人はあれから雪村の故郷の村から少し川を上ったところに住むこととなった。川の水は羅刹の発作だけでなく労咳にも効いているみたいで名前が咳き込む回数も減っていた。
「名前」
『はい、何でしょう?』
気持ちが通じ合って分かったことがある。それは沖田さんがかなりの甘えん坊だということ。家事をしていてもところかまわず抱きついてきて。料理をしているときは危ないから止めてほしいと言ったのに。そういう時は無理矢理引き剥がしてはいるのだけれど。
「はい」
ふわりと何かを頭の上に乗せられた。手にとって見るとそれは白い花で作られた冠のようだ。
「ん。可愛い」
沖田さんは前から思っていたけれどはっきりものを言うから恥ずかしい。すぐに私は顔を真っ赤に染めてしまうんだ。
『あ、ありがとうございます』
沖田さんは満足そうに笑った後、意地悪そうに口角をあげる。
「照れてるの?可愛いなぁもう」
ぎゅっと抱きしめられる。たくましい腕に彼は男の人なんだと実感させられる。私にはもう沖田さんの力に敵うことなんてなくて、敵う筈も無くてされるがままになる。けれど。
『離して下さい。洗濯物がまだ干し終わっていません』
沖田さんに呼ばれたからと途中で来た私も悪いのだけれど。
「・・・ちぇ、仕方ないなぁ」
やっと解放された私は洗濯物を干しにかかる。・・・視線を感じながら。
何かしていても私が咳き込んだり、羅刹の発作を起こさないかと常に眼を配っているのだ沖田さんは。大丈夫だと言うのだけれど中々聞き入れてもらえずにいる。