決着 (177ページ)
俺達はどんどん深い茂みへと入っていく。辺り一面木しかない。だがその方が二人にとって良かった。陽の光が届かないから。暗闇でも二人は夜目が利く。だが陽の光だけには抗えない。
「そろそろ休憩しようか」
『はい』
俺の悪い顔色に気付いたのか沖田さんは休憩を申し出た。申し訳ないけれどありがたい。俺は木を背に座り込んだ。少しでも楽になるように。だけど抑えきれずに俺は咳き込んだ。
『ごほごほげほっ・・・っ!!』
ピチャ…という音と共に俺は羅刹と化した。
「名前ちゃん!」
羅刹と化しても、もう、労咳は抑えきれない程に進行してしまっていたのだ。今まで無理に押さえ込んでいたのが抑えきれなくなった。
『ぐぁあああ、ぁ、ぅ・・・』
苦しい。苦しい。苦しい。吸血衝動、そして労咳の咳き込み。肺が苦しい。胸が苦しい。上手に息ができない。
「・・・名前ちゃん、血が欲しい、の?」
沖田さんは戸惑いながら俺に尋ねてくる。俺はもう我慢できなかった。首を縦に振り、同意を示す。
「・・・そっか」
沖田さんは寂しそうに笑った後、自らの刀で首筋を傷つける。
どっくん
心臓が跳ねる。そして俺は本能のままに彼の首筋から滴る血を舐めた。初めて口にした血はあまりにも甘美で。俺は抑えきれずに流れ出る血を綺麗に、最後の一滴まで残さずに吸い取った。
『・・・・・・ハァハァ、すみま、せん』
すぅっと落ち着いていくのが分かる。髪も瞳も元の色へ戻る。俺は、血の味を覚えてしまった。