”鬼” (95ページ)
「迎えに来たぞ。我が嫁よ」
風間は土方、沖田の前から姿を消し、千鶴の前へと移動していた。千鶴と千鶴を庇う島田を気絶させた風間は千鶴を俵担ぎで元の場所へ戻る。
「風間、てめぇ・・・!!千鶴を返しやがれ!」
皆の前に現れた風間は千鶴を置き、土方へと向かった。
「力づくで奪ってみるか?」
「屯所に踏み込んできて、これ以上好き勝手させるわけねぇだろ!」
沖田は名前の隣で激しく咳き込んでおり、立っていることさえままならないようだ。
「ふん、あやつも愚かな者よ。人間などのために命を削るなど。意味のない事を」
土方と刀を交えながら目線を名前にやり、彼女を見下しながら言う。
「どういうっ、ことだ!」
キンキンカンッ…
斬って、守って、斬って・・・攻守交替が早く、一歩でも遅れたら斬られる。そんな緊張状態で、風間は土方の問いには答える気はないらしい。まだまだ続くと思われたその時間。一人の少女の悲鳴によって終わりを告げる。
「やめてー!!!!」
いつの間にか目覚めた千鶴が土方を庇う。
「よけいなことを」
風間は土方と千鶴に刀を向けながら問うた。
「何故庇うのだ?どうせ最期は裏切られるだけだぞ。愚かな奴らといることに何の意味がある?」
「それでも信じているから」
即座に千鶴は答えた。
その為か、鬼達は意外とあっさり「興がそれた」と消えて行った。