”鬼” (94ページ)
その日はいつも通り俺は屋根の上から屯所の様子を見ていた。
御陵衛士となった俺に新選組隊士と会うことは許されない。気配を消し、ぎりぎり見えるかどうかのところで見守っているのだ。
『・・・なっ』
いつもは一言も発することなく終わるそれは、衝撃の事実によって普段と違うものになった。
『沖田さん、まさか・・・再発した―――?』
こほこほと音は聞こえないが咳き込んでいる様子の沖田。ただの風邪という可能性もないわけではないが、一度かかったのことのある死病。それを俺が外から無理やり治したのだが・・・。
「愚かだな。自らの命を削ってまであの男の病気を治したというのに、再発したとは」
『風間千景!!』
声が聞こえ振り返ると、そこには風間たち三匹の鬼の姿が。
「貴様、あそこに何をした・・・!」
『その様子だとあなたにも結界が効いたようですね。安心しました』
「おいおい、早く結界解いてくれよ。風間の機嫌が悪くなるだろ?」
『断れば・・・?』
「無理矢理にでも結界を解いてもらうだけです」
ひゅっと天霧の拳が飛ぶ。が、名前は華麗に避けた。
『チッ・・・』
「おいおい、逃げてるだけじゃ倒せないぜ?」
パンパンと躊躇いなく不知火は銃を撃ってき、それを避けると風間の刀の餌食。避けれたとしても天霧の拳が待っており、圧倒的に不利。
「逃がすと思うたか?」
キンキンッ、ザシュ―――
『っ!!』
すべての攻撃を避けるなんて不可能で。風間の刀が名前の肩に深く刺さる。
「俺達もいるってこと忘れられちゃ困るぜ」
不知火の放った弾が右足を貫き、体勢が傾いたところで天霧の拳が鳩尾に入った。
『うっ・・・』
名前は衝撃で屋根から落ちる。それだけで攻撃を止める鬼達ではない。何とか受身を取るが、すべての攻撃に受身を取っている時間はなかった。
「本当は女一人なんかに三人でなんてかかりたくねーんだぜ?」
そんなことを言いながらも銃で撃ってくる不知火。横腹にももう一発当たった。
『ち、づるは・・・お、が・・・・まも・・・る・・・・・』
「気絶したな」
「ふん、天霧。こいつを持て。土産にしてやろう」
名前も奮闘はしたのだが、いくらなんでも分が悪すぎた。血まみれになった名前を天霧はいとも簡単に担ぎ、新選組がいる屯所へと向かった。