出会い (5ページ)
「さぁ、入って」
スッと井上が障子を開けた先にいたのは数人の男たち。
「おはよ。夕べはよく眠れた?・・・みたいだね畳のあとがついてる」
千鶴は咄嗟に自分の頬を触る。
「よせ総司。本気にしている」
『大丈夫、跡なんてついてないから』
ほっと肩を落とす千鶴の隣で名前は”総司”という言葉に反応していた。昨日、俺を気絶させた男は総司というか。
「ちっちゃいし細っこいなぁ。ただの餓鬼と無愛想な奴じゃん」
次に口を開いたのは小柄な少年だ。
「餓鬼とかいうなよ、平助」
「うるさいなあ。おじさん二人は黙ってろよ」
「お前におじさんよばわりされるいわれはねぇよ。新八はともかく俺はな」
「てめっ、裏切るのか左之」
今の会話だけで名前は名前と顔を一致させていた。茶髪の気絶させたのが総司。もう一人いたのは誰も名前を呼んでいないからわからない。それから一つ結びをしている小柄な少年が平助、赤い髪が左之、もう一人が新八。
騒がしくなったのを見かねて千鶴を脅していた男が声を上げる。鶴の一言のごとく彼が叫ぶと静かになった。山南と名乗る知的な印象の眼鏡の男に促されて俺たちは襖を閉めて座った。
話題はもちろん、昨夜のことだ。
「改めて話を聞かせてくれるか?斎藤君」
「昨夜、失敗した彼らが脱走。斬り合いとなりましたが、我々とこの者が処理しました」
斎藤と呼ばれた男が名前に目をやりながら言った。そんなことより今は失敗したという単語だ。どういうことだ?失敗というからには何かわけがあるのだろう。それは何だ?俺が感じたところではあの子たちとそう変わらない。いや、だからか。何も変わっていないから失敗なんだ。あの子たちも失敗と呼ばれていた。
「なっ!?あれを斬ったのか!!?」
『俺はただ目の前の敵を斬っただけです。あと何か勘違いをしているようですが、この子は俺の言いつけでずっと目をつぶっていたから何も見ていません。見たのは俺だけです』