”鬼”  (44ページ)

『んっ・・・』

「名前ちゃん、起きた?今から状況を話してもらうよ」



翌日、目が覚めた名前は広間へと連れて行かれた。当然だ。昨夜のことを聞くなら名前か千鶴、山南の誰か。当事者である山南には尋ねられるような状態ではないし、千鶴はどうも感情的になりすぎる。客観的に事実を知るには名前が一番適しているのだ。

広間には土方、斎藤など幹部が揃っており、名前より先に事情聴取されたのか千鶴もいた。・・・千鶴が嘘をついていないか確認をとるのか?素直に見たものを話したほうがいいのかどうか。下手なことをすれば立場が悪くなる。だが隠したところで千鶴との証言が食い違っては怪しまれる。どうしたものかと悩んだ末、自分の目で見た事実を話すことにした。

なぜあんなところにいたのか。そして、どこまで知ってしまったのか。



『俺は気配を消すため遠くで聞いていたため全てを聞いたわけではありませんが、あの薬は幕府の命令のよって作られたとか。そして新選組で実験を行っていた、とお聞きしました』

「聞いちまったのか・・・」



原田は心配する声音でぽつりと呟く。



「どうせこいつが話すだろうし、先に話しちまうぞ。その薬の開発責任者は綱道さんだった。が、完成する前に行方不明になっちまった。お前が聞いたことは正しい。薬を飲んだやつらは前川邸にいる。血に触れない限りは大人しいが、一度壊れちまったら、手が付けられない。お前が相手した奴らみたいにな。・・・これは俺ら幹部だけが知っている新選組の秘密だ」

「変な動きをしたら斬るからね?肝に残しておいて」

『俺は今から殺されるのではないのですか』

「殺さないよ、少なくとも今はね」



これが新選組の秘密。俺たちが新選組に拘束された理由。ただでさえ評判の悪い新選組がこのような化け物を買っていると京の人たちに知られれば、京の町を守るどころではなくなる。

・・・俺の嫌な予感は当たっていた。

|

[Back][Top]


「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -