”鬼”  (43ページ)

そんな日々が続き、千鶴は山南のことが気になっていた。眠ることができないほどに。



「ハァ・・・」



少し空けた襖の間から山南がどこかへ移動するのが見える。



「山南さん・・・?」



こんな時間にどこへ行くのだろう?山南の後を千鶴はつける。その千鶴の後をつける名前のことには全く気付かずに。



「あれ?どこに行っちゃったんだろう・・・」



千鶴はしばらくして山南を見失っていた。キョロキョロ探していると・・・



「まさか君に見つかるとはね。予想もしてませんでしたよ千鶴君」

「っ、山南さん!」

「どうぞお入りなさい」

「・・・失礼します」



中に入った部屋は変若水の研究部屋だった。千鶴は無造作に沢山おかれている変若水に驚きながらもゆっくりと部屋へと足を踏み入れた。

名前は気配を消しながら、中の様子を伺った。山南さんは鋭い。気配を悟られないようにするためにぎりぎりの位置で立ち止まる。小さな声で話しているのだろう。言葉が途切れ途切れになってしまうのは仕方がない。



「・・・・・・・・・飛躍的な力を与えるものです」

「しかし、弱点・・・理性を失った・・・・・・」

「綱道さんは新選組という・・・実験を・・・・・・」

「そんな・・・父様が」



そんな中でも、羅刹・・・変若水の話をしているということは理解できた。・・・実験。あの子達も実験台だった、ってこと?俺も、もう少しで・・・そう思うと鳥肌が立った。名前は考え込んでしまい、山南が薬を飲み、千鶴の首を絞めていることに気付くのが遅くなった。



『千鶴っ!!』



山南の腕を叩き落し、千鶴を山南から解放させる。



『千鶴、これはどういうこと?』

「ぁ・・・ぁ、ぁ・・・・・・」



俺が少し目を離した隙に山南さんが羅刹になるなんて。信じられなかった、いや、信じたくなかった。彼は誰よりも羅刹の怖さを知っているはずだ。化け物となってしまったのもの恐ろしさを。千鶴は動揺しているからか、言葉が出てきていない。今は彼女を問い詰めている場合ではない。山南さんをどうにかしないと、そう千鶴から視線を外したのが遅かった。



『・・・ぐっ』



気付くのが遅かった。山南に首を絞められ、名前の足は宙に浮いていた。



『・・・は、なせっ・・・・・・!』



息ができずもがき苦しむ名前は山南の腕に刀を刺し、束縛から逃れた。



『っぁ、げほっ、げほっ・・・・・・』



その反動で名前は膝をつき咳き込む痛む首筋を押さえているとだだだ、という足音と共に幹部が部屋に入ってきた。



「ちょっと、どういうこと?これ・・・」



床には意識を失っている山南と変若水が入っていたと思われる瓶。そして座り込んでいる千鶴と、名前。沖田が説明を促すが、誰も説明できる状態ではなかった。


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