”鬼”  (41ページ)





「もう一年、か・・・」



土方はぽつりと呟き、彼女たちとの出会いを思い返していた。



「あれは本当に偶然だったのか?」



京に来てすぐ羅刹を見て俺たちに監禁される・・・そんなことがあるのだろうか?はぁ、と一息つき、机の上にある仕事の紙の束を見る。悪いがあいつらのことまで考える余裕はしばらくなさそうだ。

















「西本願寺」



新しい屯所の話で、土方は口を開いた。山南は反対したが、伊藤が土方に賛成した。



「山南さん。その左腕は使い物にならないそうですね。でも剣客としては生きられずとも、才覚として十分役に立つことはできますわ」



伊藤の言うことに反論した土方は墓穴を掘ってしまい、山南は部屋を出て行った。



『山南さん・・・』



お茶を差し入れようとしていた名前は部屋を出てきた山南と出会う。



「秀でた参謀の加入でついに総長はお役ごめんというわけです」

『っ・・・』



名前は去っていく山南を見つめながら、頭を悩ませていた。俺が術を使っても山南さんの傷を癒すことはできない・・・後遺症系は俺の力じゃ無理。もっと強力な力じゃないと。



「名前・・・?」

『ん?ごめん。なんでもないよ千鶴』



俺には、何も出来ない。何もすることが出来ない。何て無力なんだろう。。。







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