”鬼” (40ページ)
秋になり、伊東甲子太郎が江戸から新選組にやってきた。伊東甲子太郎の歓迎のため、宴の準備をしている千鶴と名前の元へ土方がやってきた。
『土方さん、どうかなさいましたか?』
「平助からの託だ。お前の家に寄ってみたが綱道さんの手がかりはなかったらしい」
「そうですか・・・ありがとうございました」
『残念だったね』
「うん・・・」
期待していたであろう千鶴へ名前は土方が出て行った後、声をかけた。
『また次がきっとあるから。今は俺たちにできることをしよう?』
「うん、そうだね・・・」
どうやって励ましたらいいのだろう?名前は悩むが、結局、どんな言葉をかけていいのかわからずじまいだった。
『失礼します。空いた器を下げにきました』
「まぁ、貴方きれいな顔をしてらっしゃるのね。名前は何と言うのかしら?」
『一番組組長の小姓をしております、雪村名前です』
「名前君ね・・・覚えたわ」
『・・・大変光栄でございます。では、失礼いたします』
器を持ち、名前は下がる。沖田は名前を追いかけるように席を立った。
「名前ちゃん」
『何ですか?沖田さっ・・・』
ぎゅ、と名前は沖田に抱きしめられた。
『え、えと・・・』
「はぁ〜・・・・落ち着く。名前ちゃん、伊藤さんに近づくの禁止ね?」
『・・・・・・? はい、分かりました』
沖田の機嫌が直ったことを、沖田自身も名前も気付いていなかった。