”鬼”  (38ページ)

平助が江戸へと旅立ち、静かな夕食を迎えていたところ・・・



「辛い」



ぽつりと、斎藤が夕食の際、言葉を発した。


「こりゃ、ひでぇ。作ったの総司だろ」

「なーにその言い方?とりあえず茹でて醤油に浸すところまでは僕がやったけど?別にまずくないと思うけど」



沖田は料理に対して適当すぎるのだ。基本的に沖田が料理したものは濃すぎて食べられないものであった。



「斎藤、どうした?」

「水洗いしてくる。塩分のとりすぎは健康を損ねる」



斎藤は席を立って、行ってしまう。その後を追いかけるように原田、土方たちも続く。



「千鶴ちゃんと名前ちゃんは行かないでいいの?」

「えっ、えっと・・・・・・」



千鶴も水洗いしたいのだが作った本人の前で行くのは躊躇われた。



『俺は食べられたらなんでもいいので』



おいしい、おいしくない、という味覚がなく、食べられるか、食べられないかが基準の名前にとっては問題なかった。



『・・・千鶴、行くなら行ってきたら?』



行きたいけれど失礼ではないか、と顔の表情で見取った名前は水洗いしてくるよう促す。塩分の取りすぎて千鶴の体に害なされるのを避けたかった。千鶴は沖田を一瞬見てから席を立った。



「クスッ、千鶴ちゃんはまだ僕が怖いみたいだね」

『それは沖田さんが悪戯したり斬るなどとすぐ言うからでは?』

「千鶴ちゃんの反応楽しいんだもん。もちろん君もね」

『そうですか』



何が面白いのかよく分からないけれど、とりあえず大人しくいておこうと名前は思い同意する。



「じゃあ、僕もちょっと水洗いしてくるね。名前ちゃんも行くよ」

『分かりました』



二人も席を立ち、水洗いをしに行った。

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