”鬼” (36ページ)
「風間、そこまでです。薩摩藩に君する我らが新選組と戦う理由がないのは百も承知のはず」
「ふん。まさかとは思ったが、やはり。では、お前は・・・」
言葉を続ける前に風間は消え去った。迎えにきたと思われる仲間とともに―――
「おい、お前ら大丈夫か?」
『俺は大丈夫です』
「私も大丈夫です」
「なら天王山へ向かうぞ。名前、そいつを背負ってて大丈夫なんだな?」
『問題ありません』
名前が隊士を背負ったまま、天王山へ三人は向かった。
天王山の下で沖田たちの帰りを待つ。だが彼らの言葉は新選組の遅れを表す言葉だった。
「土方さん。上に行ったら長州のやつら残らず切腹してたぜ」
「そうか。敵ながら見事な死に様だな」
「いいんですか?」
「新選組としちゃよくねぇよ。だが潔さを肯定するのに敵も見方もねぇんだよ。分かるか?」
「はい、分かるような、分からないような・・・です」
「で?なんで名前ちゃんが隊士を運んでるんですか?」
沖田の目線は名前に背負われている隊士に向けられていた。
「不貞腐れてんじゃねぇよ総司。名前が大丈夫っていうから背負ってもらってただけだ」
「ふーん・・・そうですか」
ほら貸してと腕を伸ばし、半ば無理やり他の隊士に背負わせる。
「おいっ!!町が燃えてるぞ」
「えっ・・・」
御所に討ち入った戦士たちは息絶えたが、生き延びたものが市中に火を放ち、大火事となったのだ。
後に長州藩は逆賊として扱われることになる。この事件はのちに禁門の変と呼ばれることになった。
そして新選組にも大きな出会いがあった。
風間千景、天霧九寿、不知火匡と名乗る三人との出会いだ。これも何かの縁なのか―――新選組に影を後に落とすことになる。