出会い (2ページ)
「ハァ、ハァ、ハァ・・・」
師走の夜。京に影を落とす少年たち、いや少女たちの姿。必死に走って後ろから追いかけてくるものから必死に逃げている。
「待ちやがれ小僧っ」
「くそっ、どこに行きやがった」
「逃げ足の速い小僧だ」
「そう遠くへは行っていない、探せ!!」
数人の刀を持った男と追い駆けっこ。逃げていた一人はもう一人を物陰に隠すと男たちの前に姿を現すため、顔を上げた時だった。―――ぷつり、肉を引き裂くような音がした。
「ぐあああああ」
「ぐあっ!」
追いかけていた浪士たちの悲鳴が聞こえる。彼女は目の前で起こった事実に驚愕した。目の赤い化け物が、自分たちを追っていた男をいとも簡単に殺していく。
「くけけけけけけけ」
「ひゃーっはははははは」
「何なんだこいつら!?」
浪士が倒れていく。白い髪の化け物に倒されていく。物陰に隠された女はその光景を彼女の背中超しに見てしまったのか震えている。落ち着かせる前に彼女―雪村千鶴は無意識に後ろへ下がり、引戸に当たってしまった。その音に気が付いた化け物たち。もう二人を追いかけていた男たちは誰一人立っていない。
『逃げて、千鶴っ!!』
名前は叫んだ。自分一人でこの化け物を、三人も相手をするのは不可能と分かったのだ。だが、もう遅い。化け物たちはすぐそこに迫っている。
名前は小さく舌打ちをし、どうやったら一人で化け物を倒せるか必死に考えていた。時間を稼ぐだけでは、この腰の抜けてしまった千鶴は助けられない。とすれば化け物を動けなくするしかない。だが、それが自分にできるか。一人も残さずに動けなくすることが。
考えている時間は彼女にはなかった。殺るか殺られるか、真剣を持ったからにはその二択しかない。
―――キィーン・・・シュッ、ザクッ・・・・・・・・・
白い髪の化け物が一人倒れていくのが見えた。他の二人からの攻撃がくる、と彼女が思い、守りの姿勢に入ったときには化け物は誰一人、立っていなかった。
『誰だ』
暗闇に姿を隠しているが抑えきれていない殺気が名前に浴びせられる。それに怯えないのはさすがの一言だろう。
月を隠していた雲が動き、ようやく彼らの姿を彼女たちは確認した。浅葱色の羽織を羽織った彼らの姿を。