”鬼” (34ページ)
今夜は一晩中、気を抜くことは許されないだろう。
『千鶴、眠たかったら寝ていいからね?』
「あっ、いや、大丈夫だよ。私だけ休むなんてずるいから」
「そういう名前ちゃんはどうなのさ?」
『俺は大丈夫ですよ』
「ちぇっ」
沖田は拗ねるふりをし、名前は少し困ったような顔をしている。
「名前を困らせるな総司」
からかいが過ぎるぞ、と斎藤は総司を止める。
『ありがとうございます斎藤さん』
「いや、たいしたことではない」
さらに沖田は不機嫌になったのだが名前には何故だか分からなかった。
千鶴が舟をこぎ始めた頃
ドンドンッ
大砲を撃つ音が鳴り響いた。
「ん?」
『千鶴、起きた?行くよ』
「うんっ」
新選組の皆と一緒に駆け出す。だがそれを会津藩士がそれを引き留めようとする。我々は待機を命じられている、と。出動命令は来ていないと。そんなことを言い出したやつらに土方は言い放った。
「俺たちは待機をするために来たんじゃねぇ!戦いにきたんだろ!今動かないでどうすんだ!」