池田屋事件 (28ページ)
池田屋での後片付けがすべて終わった頃、名前は土方の部屋を訪れていた。
『土方さん、今日は半日お休みをいただけませんか?』
「あぁ、半日といわず、今日一日ゆっくり休め。千鶴にも言っておいてくれるか?」
『はい、ありがとうございます』
案外あっさり出た許可に驚きながら、千鶴の部屋を目指す。
『千鶴ーって、どこいったんだろう?』
部屋を空ける前から気配がない気がしてた。中を見てみるとやはりいなかった。
『っ!まずい・・・早く自分の部屋に戻らないと』
のどに突っかかるものを感じ、急いで部屋へ戻った。
『ごほっげほげほ・・・』
代償が来たのだ。沖田の傷を治した代償が。あの力は無償で与えられたものではない。自らがその怪我を負うことで彼の傷を治しているのだ。
『っ!!』
胸の痛みに耐えていると、額が割れるように痛くなってくる。おそらく平助の代償が来たのだろう。
『っ、がはっ・・・ハァハァ、ハァ』
苦しい、息ができない。胸元が痛くて、頭が痛くて。そんな痛みに耐えながら力を集めて一気に治す。鬼化した自分が傷口に口付けるその傷口はすぐに治り、自分に代償が来ることが分かったのはいつだっただろう。初めて自分の意思でこの力を使った気がする。
暫く経つと痛みがなくなり、傷がすべて治ったことが分かる。
『あ、どうしよう・・・』
沖田の代償を払っているときに、吐血してしまった。手と口周りに血がべっとりついている。額からも血が流れ、固まっていた。
「名前ー」
ちょうど千鶴が来たので、申し訳ないながらも頼んでみる。
「ちょっとどうしたのその血!!」
『しー。ただの代償だから。もう治ったし問題ないよ。それより、なにか拭くものもってきてくれない?』
「分かった!!」