池田屋事件 (26ページ)
『ハァ、ハァ・・・』
名前が池田屋についた頃は討ち入りした後だった。躊躇いなく名前は池田屋に入り、刀を抜く。
『近藤さん』
「ん?なぜ君がっ」
お互いに浪士を斬りながら、山南に言われたことを伝える。
『近藤さん、今更ですが山南さんからの伝令です。土方さんたちが来るのを待つように。と。今、千鶴と山崎さんが土方さんたちのほうへ向かってます。どうやら遅かったようですが』
「そうか、ご苦労だった」
『いえ、これくらいたいしたことありません。・・・後ろっ』
名前は近藤を後ろから狙っていた浪士を倒す。
「すまん」
『いえ。それより沖田さん方の姿が見当たりませんがどちらに?』
「総司たちなら二階だ」
『ありがとうございます』
名前は二階への階段を上がっていく。出発前に感じた、嫌な予感が気になったのだ。
「おらぁぁぁぁぁ!!」
ザシュッ
上から来た敵を何なく斬り、二階へたどり着く。そこでの光景に名前は驚いた。
「ぐぁっ!・・・・・・ごほっ、ごふっ」
あの沖田が胸を蹴られ、血を吐いているのだ。
「ゼェ、ハァ、ハァ・・・」
敵は沖田の剣を交わし斬りこんでくる。沖田さんの腕でかなわない相手・・・到底自分にはかなわないだろう。この敵・・・何か、千鶴と似た気を感じる。
『沖田さんっ』
気がつけば名前は庇うように沖田の前に立っていた。
「お前もそやつの仲間か?邪魔立てする気ならお前も・・・ほぅ、同士か」
『同士・・・?』
同じ鬼と言うことだろうか?確かにこの人の強さを見れば納得できる。人間よりもはるかに強いその力を見れば。
「あんたの相手は僕だよね?この子には手を出さないでくれるかな」
沖田は名前と敵の前に体を滑り込ませ、敵から名前を隠す。手足、腹、胸元、あらゆる場所から血を流しながらも瞳だけは光を失っていなかった。
「そんな体じゃ盾にもなるまい」
「うるさいなぁ、僕は役立たずなんかじゃないっ」
そんな沖田を一瞥し、名前のほうを見る。
「ふん・・・お前、名は何という?」
『人に名を尋ねるときは、自分から名乗るべきかと』
「・・・風間千景だ」
『雪村名前』
その瞬間、風間の表情が変わった。
「雪村、だと・・・?チッ、またな名前よ」
「待てっ!!・・・ゴホッ、ゴホッ」
去っていった風間を追いかけようとするが、激しく咳き込み、沖田は意識を失った。
『沖田さんっ!!』