池田屋事件  (20ページ)

翌日には外出許可が出された。ただし、巡察に同行、組長に従うことが条件だ。



「ありがとうございますっ!」
『ありがとうございます』



俺たちは一番組に同行しながら道行く人に綱道さんについて聞いていた。



「そうですか、ありがとうございます」



千鶴は綱道さんらしき人を桝屋で見たという情報を得て、走り出した。だが、名前と沖田の前には浪士が立ちふさがっている。沖田は咄嗟に判断し、名前に千鶴を追うよう指示した。どこかに隠れていてくれたほうがこちらとしてもやりやすいということだろう。



「名前ちゃん、僕はこっちを片付けてから行くから。千鶴ちゃんと大人しく待ってて」

『はい』



名前が千鶴の元へ走って行くと、千鶴に剣を振り上げる浪士の姿が見えた。

―キンッ



『この子には手を出さないでください』


どうやら浪士に千鶴が新選組といたところを見られていたらしい。浪士が持っていた剣を払いのけ千鶴を背中にかばいながら名前は刀を浪士へと向けた。



「こんな餓鬼になんか負けるか!!行くぞお前ら!!!」



桝屋にいた浪士数人が束となって向かってきた。そんな姿に動揺せず名前は千鶴を落ち着かせるような声色でやさしく言い放つ。



『千鶴、目閉じてて』



血なまぐさいところなんて見せたくない、そう思ったのだ。これだけの人がいればかなり血生臭くなってしまう。一瞬だけ千鶴に映した視線を浪士たちに向け直し、刀を構え・・・





ザシュッ



一番近くでこちらに向かってきた浪士を斬り殺す。



「僕は大人しく待ってて、って言ったはずなんだけどな。どうしてこんなことになってるのかな?」



そう言って入ってきた沖田に続き一番組が建物の中へと行き、





桝屋は戦場となった。

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