決着  (191ページ)

薫は妹の名を呼びながら息絶えた。彼は、私に似ていたのかもしれない。千鶴に出会う前は人を憎んでいた。どうして自分がこんな目にあわなくてはならないのだろうと。千鶴に会うまで人がこんなに優しいことを知らなかった。



「名前ちゃん」



沖田さんに呼ばれ、私は感慨から醒めた。そして座り込んで震えている主人へ刀を向ける。



『あなたはもう何もできない。手駒を失ったあなたには』



主人は強くなどないのだ。ただ周りにいる私のような買われた強い者がいる為、強いと勘違いされやすいだけ。ほら、こうなってしまっても自らが化物になる度胸なんてない。

刀を振り上げる。その先が微かに震えているのを感じる。カタカタと震える一本の刀を両手で持って抵抗をしない、いや、できない主人の心臓へと突き刺した。



『ハァハァハァ・・・』



肩で息をする彼女はへなへなと沈んでいく。どうやら力を使いすぎてしまったようだ。様子を見る限り、少し休めば治るだろう。沖田は彼女を休めそうな大きな石の近くまで連れて行き、石にもたれさせる。



「頑張ったね。休んでいいよ」



大丈夫です、と言う言葉には力なんてなくて。そのうち彼女の瞼はゆっくりと閉じていった。



すやすやと眠る名前ちゃんの顔色を覗き込むとそれはとても穏やかで。僕も少し休もうかな。今日はもう疲れちゃった。ここなら新政府軍には見つかることはないだろうと思って、僕は頭を名前ちゃんへ預けるように眠りに着いた。

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