決着  (190ページ)

「ま、待て!殺さないでくれ!!」



先輩を殺されたことにより主人は慌てる。腰を抜かしており這い蹲りながら後ずさる。キンキンッ―――沖田と薫は未だ刀を交えているが見るからに沖田が優勢であった。



『・・・あちらも決着がもう着きそうですね』



丸腰の主人に私は刀を振り上げる。これで、これでやっと終わるのだ。私は解放される。私は主人に意識を向けすぎていた。だから薫がこちらへ向かっていることに気付けなかった。



「動いたらこの首飛ばすよ?」



私の首元には刀があって。まるで私が変若水を飲んだ時と同じだった。



「薫っ・・・!!」



沖田さんの表情が歪む。私が邪魔してしまった。すっかり油断してしまっていた自分を恨みながら冷静に判断する。そして・・・



「ぐっ!?」



静かに名前は自分の刀を抜き取り、刀を薫の横腹へと突き刺した。名前は力が抜けた薫の腕から逃げだす。



『沖田さん!』



今です、と言う前に沖田は地面を蹴っていて。すぐさま薫の心臓を貫いていた。



「がはっ!」



ぽたぽたと血を胸から流しながら薫は力なく膝付く。まだ息があるものの、もう傷は治らない。



「・・・どう、して、名前は、どう、して、人間をかば、う・・・?」



名前をあそこまで蔑んだというのに。鬼の誇りを汚したというのに。どうして人間の方につく?俺には理解できない。どうして千鶴が、名前が人間側に付くのか。



『・・・あなたは、かわいそうな人なのね』



見下すわけでもなく哀れむわけでもない。俺の知らない瞳で名前は見つめてくる。呼吸がつらい。息が上手くできない。血が喉にべったりと張り付いてしまっているようだ。上手く音にならない声を出しながら俺は地面に這い蹲る。



「っ、ちづる・・・」



俺の唯一の家族、千鶴。悔しいほど愛おしくて悲しくて憎らしい妹。もしここが襲撃されなければ。もしここで皆で暮らしていたならば。



「・・・おれ、の、たった・・・一人、の。にくらし、くて、いとおしい、いもう、と・・・」



俺の伸ばした手は空を切って地面に着いた。

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