決着 (183ページ)
「さてと、明日向けて体を休めようか。おやすみ」
『おやすみなさい』
これは夢だ。残酷で綺麗で優しい夢だ。だって”皆がいるのから”。近藤さんがいて、その隣には沖田さんと土方さん。そして酌をする千鶴がいて。私も沖田さんの酌をする。千鶴の隣には平助君に永倉さん、原田さん。私の横には斎藤さんや山崎さん、井上さん、山南さんまでいるのだから。皆で仲良く花見をしている。酒が主な人たちもいるけれど。この私は笑っていて、皆も笑っている。幸せなはずなのに、近藤さんはなぜか悲しそうな顔をしている。それは近藤さんだけではなくて。よく見たら、平助君や原田さん、山南さんも儚げに笑っていた。
『どうしました?』
私がそう尋ねる前に彼らは消え去ってしまった。
『・・・夢』
「大丈夫?名前ちゃん」
『はい』
そっと沖田の腕が伸びてきて頬を軽く擦る。知らない内に涙を流していたようだ。涙の跡は沖田によって綺麗になくなった。
『夢を、見たんです。とても幸せな夢を』
「そっか」
けれども確かにそれは不穏な空気を含んでいて。胸騒ぎに気付かないふりをしながら私達は宿を後にした。