決着 (181ページ)
「え、名前ちゃん?」
僕の情け無い声がその場に響く。だってまさかだったんだもの。仕方ないじゃない。すっぽり白い湯に身体を沈めてはいるものの、彼女の豊満な胸元、谷間はしっかりと見えてしまっている。肌は蒸気で少し赤みを帯びていて。長く使っていたのか、瞳はとろんとしてしまっている。腰にだけでも布を巻いててよかった。そんなこと思うなんてね。
『沖田さん、冷えますよ』
「そうだね、入ってもいい?」
『もちろんです。どうぞ』
この娘、危機感とか皆無なの?男を自ら湯に誘うなんて。ただ外気に触れている体はどんどん体温を奪われていく。さすがに寒くなり僕は名前ちゃんの横に腰を下ろした。元々あまり広さの無い露天風呂は二人が入ると肩が当たるくらいになる。片腕に柔らかい感触を感じた僕は懸命に耐える。まずいまずいまずい。どうにか静まって。
『沖田さん?顔が赤いようですが大丈夫ですか?』
「・・・ぅん、大丈夫だよ」
このままじゃ立てない。とにかく先に名前ちゃんに上がってもらわないと。
「名前ちゃんこそ大丈夫?顔が赤くなってる」
『そうですか?ではそろそろ上がりますね』
ばさっと彼女は立つ。布が身体に張り付いてしまっていて、身体の線がよく分かる。女性だという、確かな線が。
「っ・・・!」
頬を真っ赤に染めた僕の方を見ず、彼女はそこから去って行った。
「どうしよう、これ」
情け無いほどに熱を持ってしまったものはそう簡単には冷えてくれないのだろう。僕は諦めてしばらく湯に浸かることにした。綺麗な夜空を眺めながら。