決着 (178ページ)
その数刻後。次は沖田の番であった。
「ぐぁああああ」
綺麗な茶色い髪を白く染め上げる。
『沖田さん』
俺は迷いながら自らの刀を抜く。俺みたいに血の味を覚えてしまえば、血なしには生きられなくなるだろう。次からの吸血衝動に押さえが利かなくなるであろう。沖田さんをそうしてしまっても良いのだろうか。俺の中で戸惑いが生まれる。そんな俺の心の中を見透かすように沖田さんは苦しみながらも言う。
「僕、には・・・僕は、お預け、なんて、苦しいん、だけど、な」
その言葉を聞いて俺は首筋を斬ろうとするのだが沖田さんはそれを制する。そして沖田さんは俺の刀を取り、俺の手に近づけた。
『・・・んっ』
ツーっと赤い血が流れ出る。そしてその血を沖田さんは舐める。何故だかぞくぞくした。決して嫌な訳ではない。むしろ嬉しいという感情だった。傷が塞がり、血が止まり、沖田さんは元の姿に戻った。
「ごめんね、ありがとう」
気がつけば俺は沖田さんと手を結んでいた。大木に背を預けて二人となり合わせに、まるで恋人のように眠っていたのだ。
『沖田、さん?』
「おはよ、名前ちゃん」
だが眠っていたのは俺だけでどうやら沖田さんは起きていたらしい。
『ずっと起きていたのですか?』
「うん。見張り役が必要でしょ?」
二人とも新政府軍から追われる身。名前の顔は知らずとも、沖田は悪名高い新選組一番組組長として顔を知られているだろう。
『すみません』
「いいの。体力のある方が見張りをする。その方が効率的でしょ」
確かに今の名前にはずっと起きているほどの体力は残っていない。だけど沖田も苦しいはずだ。なのに。
『ありがとう、ございます』
そして、ごめんなさい。謝りは口に出さなかった。
「ねぇ名前ちゃん。薫を倒したら伝えたいことががるんだ」
『・・・分かりました』
俺も言わなくてはならない。
『沖田さん、実は言っていないことがあるのです』
勘のいい沖田さんは気付いていただろうけど。
『俺には薫より倒さなくてはならない人がいます』