君が故 (170ページ)
「どうして、どうして近藤さんを見殺しにしたんですか?」
名前ちゃんの背中が見えなくなってしばらく経った頃、僕は土方さんに尋ねる。あくまで冷静を装って。だけど土方さんは何も言わない。黙って僕を見つめるだけだ。それが僕を苛立たせる。
「何で近藤さんを見殺しにしたんだ!何とか言えよ!!」
気がついたら土方さんの胸元を掴みながら僕は叫んでいた。大木へと土方さんの体を押し付ける。
「あんたがいながらどうして近藤さんを助けられなかったんだ!?」
どうして?土方さんがいたのに。土方さんが着いていたのにどうして近藤さんが捕まって殺されてしまったのか。土方さんならどうにかできたはずなのに。
「沖田さん止めてください。土方さんは怪我をしているんです!」
そんな僕を止めるように千鶴ちゃんが声をかける。スッと冷静になった僕は土方さんから手を離す。確かに土方さんの首筋には包帯が巻かれており血が滲み出していた。
「・・・俺だって近藤さんを殺したくて殺したわけじゃねぇよ」
土方さんから離して下を見ていた僕は視線を戻す。その瞳には悔しさが滲んでいた。僕はそんな土方さんを見たかったわけじゃない。そんな事を聞きたかったわけじゃない。これ以上土方さんと面と向かっていることが出来なくなった僕はその場から逃げるように立ち去った。