君が故 (167ページ)
「・・・ねぇ、どういうことなのかな?」
不知火が消え、しばらくその先を見つめていたものの僕は口を開いた。労咳が治っていない?彼女は長く生きられない?分からない。知らないことが多すぎる。
彼女は軽く溜息を吐いた後、聞きたくなかった言葉を発する。
『・・・俺の労咳は、不知火匡の言う通り治っていません』
僕が軽率すぎたんだ。勝手に、羅刹になったから労咳は治ったのだろうって思い込んでいた。名前ちゃんは何も言わなかったし、咳込まなかった。だから気付けなかった。・・・いや、気付きたくなかっただけなのかもしれない。僕達の間には色々なことがありすぎた。名前ちゃんを僕はきちんと見れていなかったのかもしれない。
『死病は俺の体を刻々と蝕んでいます。今も。羅刹となって症状が表に余り出なくなっただけです。・・・ごめんなさい。心配かけたくなくて』
「何も言ってくれない方が心配するんだけど」
『ごめんなさい』
軽く眼を伏せ、しゅんとなる名前ちゃん。彼女は悪くない。言い出せるように配慮しなかった僕が悪いのに彼女は謝る。そんな彼女を抱き寄せて僕は囁いた。
「ごめんね。君は悪くないのに」
―――さて、これからどうする?
彼女をこのまま北上させてしまっても良いのだろうか?彼女をこのまま戦わせてしまっても良いのだろうか?そんな葛藤が生まれる。・・・でも、今更名前ちゃんが聞くわけない、か。僕も彼女がいてくれると力の加減ができる。まだ、頑張ってくれる、かな・・・?でも、つらいときは甘えていいんだからね?