君が故  (164ページ)

近藤さん。近藤さん。近藤さん。

昔から面倒見がよかった近藤さん。僕のことを昔から気にかけてくれた近藤さん。僕に剣術を教えてくれた近藤さん。僕に守る強さを教えてくれた近藤さん。

僕にとって兄のような存在だった。とても大事な人だった。そんな人が死んでしまっただなんて理解できなくて。頭の中はぐちゃぐちゃで。―――もう、近藤さんとは会えないの?

僕の足は自然に止まり、僕の真後ろをついてきていた名前ちゃんは僕の背中に勢い余って激突する。そんな名前ちゃんに顔が見られないように抱きしめて、肩に顔を沈めた。



「ごめん、今は君を抱きしめていたい」



名前ちゃんの腕が恐る恐る僕の背中へと回る。そしてぎゅっと抱きしめられた。僕は震える腕に気付かれないようにしながらしばらく彼女の優しさに甘えていた。あったかい・・・安心する。僕の心が落ち着いてからもしばらく名前ちゃんに甘えていた。するする頭を擦ってから顔を少し上げると、くすぐったそうな名前ちゃんが目に入る。



「・・・ありがと、名前ちゃん」

『いえ』



そうして彼女は笑った。今まで見たものとは違い、口角が上がっただけではない笑みを。そんな名前ちゃんにつられるように僕も笑ったんだ。近藤さんが亡くなったと聞いてから初めて僕は笑った。

それから僕達は自然と手を取り合って走った。今までは僕が前を、名前ちゃんが後ろから着いて来ていたのに。

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