君が故 (161ページ)
沖田と名前は走る。土方と話をするために。千鶴と会って守るために。だが少しずつ名前の走る速さが遅くなった。
「・・・名前ちゃん、休憩しようか」
昨日から走りきりだ。昼も、夜も。沖田自身も疲れてはいた。だが名前ほどではなかった。道から離れて木陰にひっそりと潜むように座り込む。
『ハァ、ハァハァ・・・っ!?』
どくん
どくん
心臓が激しく波打つ。
血ガ欲シイ
ううん、血なんていらない。
血、チ、ち
違う、違う、違う。これは俺じゃない。
血が、血がほしい・・・?
スゥと髪は白く染まる。綺麗な瞳の色も今はただの血の色だ。
「名前ちゃん!!」
『っぁ、ぐ、ぅ・・・』
血なんていらない。俺には必要ない。狂いたくない。化け物になんてなりたくない。しばらく苦しんだ後、彼女は元の姿へと戻った。
『すみません、もう、動けそうにありません』
「いいよ。ゆっくり休んで」
沖田は羅刹の吸血症状の苦しさを知っている。そしてそれが自らもなることがあるということを。
その頃、永倉が旧幕府軍と合流していた。