君が故 (160ページ)
「近藤さんが捕まった!?」
名前の体調も順調で無理矢理松本先生に許可を貰い、二人は北上する新選組を追っていた。その最中で聞いた話であった。
「近藤さんが捕縛されるなんて・・・」
それは沖田にかなりの動揺を残して。
『ハァハァハァ・・・ハァハァハァ・・・』
陽の出ている内から二人は茂みの中を走った。が、まだ陽に慣れきっていない名前にはかなり酷であった。だが名前は何も言わなかった。無理矢理足を動かして走っていた。痛みが分かるのだ。沖田の痛みが。だからこそ無理にでも走っていた。たとえ自分が苦しいとしても。
パンパンッパンッ…休んでいた沖田と名前は銃撃の音で目が覚めた。近くで新政府軍と旧幕府軍との戦いが始まったのだ。
『ハァハァ、ハァ…』
生憎、今は昼であった。普段なら簡単にその場から立ち去ることができたであろう。だが陽の光は羅刹の二人にとって厳しかった。特に羅刹になったばかりの名前にとっては。休みをほとんど取らなかったのも悪かったのかもしれない。
『・・・あ』
叢に身を隠して移動していた。だがカサと音を立ててしまったのだ。
「誰だっ!?」
近くに居た新政府軍に見つかった。一歩一歩近づいてくる敵。さて、どうするか。そう考えていると沖田さんがこそっと話しかけてきた。
「相手は三人。多分近くにいるのにもばれるだろうから五人かな?名前ちゃん、いける?」
『はい』
沖田の合図で二人は叢から飛び出した。そして互いに一人ずつ敵が反応するよりも早く斬り殺した。新政府軍は銃を二人に向けるが―――
『・・・ふぅ、あっけなかったですね』
「多分、見張り兵だと思う。主戦力は・・・」
戦火の上がる町へと目線を向ける。そのまま刀についた血を払い鞘に戻した。
「また敵が来るかもしれないから移動するよ」
そうして二人はまた走り出した。新選組を目指して。