君が故  (158ページ)

「名前も飲めよ」

『えっ』

「ほらほら」



酌するだけだった名前に酒を酔った永倉は勧めてくる。名前は酒を飲んだことは無く、躊躇いながらも初めての酒を口にする。



『・・・ヒック、ヒック』



一酌、たったの一酌分飲んだだけなのに名前はすぐに酔っ払ってしまった。真っ赤な顔で眼がとろんとしている。そのような名前の艶やかしい姿に男たちは見とれていた。名前には最早まともな判断力など残っておらず、さらに酒を飲む。



「ちょっと、名前ちゃん。終わりだよ」



ひょいと簡単に酌を沖田は名前から取り上げる。



『らめなの〜。もっとぉ』



それはまるで猫のように。普段では出さないような甲高い声を出して。呂律の回らない様子で誘うような表情で沖田に強請る。沖田は頬を染め上げ、その顔を見られないように手で隠している。その様子を見て名前は沖田の膝から動き、原田の胡坐をかく足の間に体を滑り込ませた。



『はらだしゃんー、もっとちょーらい?』



至近距離で首をかしげる名前。その顔に一瞬で撃沈してしまった原田は名前を自らの腕の中へと閉じ込めて力強く抱きしめた。



「ずりーぞ、左之!」

「はいはい、離れて」



その様子が面白くなかった沖田は無理矢理名前と原田を引き剥がし、自らの方へと寄せる。そしてそのまま名前を持ち上げた。



「部屋まで連れて行ってくるね」

『やー、もっと飲むの〜』



じたばたと暴れるが酔っているからか力が入っていない。落とさないように細心の注意を払いながら沖田は部屋へと運び込んだ。そして沖田は名前を布団へと寝かしつけ自らも自室へ戻った。


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