君が故  (157ページ)

名前が羅刹になった初めの頃は心配していたが体調は落ち着き、衝動にも駆られない様子を見て沖田は安堵していた。そろそろ新選組に戻ろうかとも言っていた頃、永倉と原田が二人を訪ねてやって来た。



「よっ、久しぶりだな」

『原田さん、永倉さん』



洋装してから髪を切ってから二人と出会うのは初めてだった。同じ人間だというのに雰囲気が変わっていてさすがの名前でさえも驚いた。それは原田、永倉にも言えたことだが。



「髪、切ったんだな。似合ってる」



名前の肩で跳ねる髪を触りながら原田は言う。くすぐったそうに名前は顔を横向け軽く口角を上げた。



「名前、思ってたより元気そうで安心したぜ」



二人は、いや新選組の幹部達は未だ名前が羅刹に成った事を知らない。知らされていなかったのだ。だから当然、名前は療養しているものだと思っていた。元気、とまではいかないが動き回る名前に驚きを隠せなかった。そんな二人に隠せる訳も無く、全てを話した。



「・・・そう、か」

「名前まで羅刹になっちまったのか」

「でも労咳は治ったんだよな!?」



せめてもの救いを求めて永倉は問う。



『はい、もう大丈夫です』



名前自身、本当は分かっていなかった。けれどもなぜか大丈夫、と答えるべきだと思った。



「今日は騒がしくなりそうだね」



昼間からにもかかわらず、沖田と名前は起きて客人二人と楽しんでいた。


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