君が故 (156ページ)
苦しい。ずきずきと頭が痛い。
『っ、あ、あ・・・はぁはぁ、はぁ』
鬼の血が変若水と葛藤しているみたいだ。自分は今、鬼なのか羅刹と化してしまったのかどちらか分からない。苦しみをしばらく耐えていると、少し楽になった。
「名前ちゃん」
ずっと背中を擦っていていた沖田の声が心地良い。
『も、大丈夫、です』
「だーめ。羅刹になったんだからきついことくらい分かってるんだよ」
『俺、より、薫を』
「君が羅刹になったのを確認したら逃げていったよ。もう心配はない。君は大人しく寝ていればいいんだ。ね?」
少しだけ与えられる暖かさに甘えていたかった。
翌日、俺が起きたのは夕方だった。
「大丈夫?名前ちゃん」
そして布団の隣には沖田が座ってこちらを見ていた。大丈夫です、と身体を起こす。羅刹になったからだろうか。咳き込むことがなくなった。胸元の痛みも消え去った。だけど無性に胸騒ぎした。なぜだかは分からない。ただ悪い予感がしたのだ。その考えを消すように顔を横に振り、沖田と共に夕餉、いや朝餉を食した。