君が故  (153ページ)

「甲陽鎮撫隊という名を頂いた。そして俺は大名という名高い位を頂いた。この戦いで活躍した者は俺の家来としてやろう」



近藤は唯の農民から大名という位を上から貰い、大層喜んでいたのだがそれに納得していない隊士達もいた。元から武士という身分であった永倉、そして原田であった。



「・・・俺は新選組の組長だ。が、あんたの家来になるつもりはねぇけどな」



永倉と近藤に亀裂が入った瞬間だった。口を閉ざした隊士たちを見ながら斎藤は口を開いた。



「何にしろ戦の準備だ」



それにあわせるようにして土方は言った。



「今回羅刹隊はここで待機してもらう」



新選組以外の兵士がいる為だ。見られては困る。羅刹は幕府との密約事なのだから。土方には別の思惑もあったのだが。

会議の後、愚痴を零しに二番組組長永倉と十番組組長原田は酒を飲んでいた。



「大名だか何だかしらねーが近藤さんは何を勘違いしてやがるんだ?いつでも近藤さんはえらぶったことを言わなかった。だから俺はあの人について来たんだ」

「だよな。今度は城勤めだと?俺たちに城を守れというのか?」



この時、この瞬間に彼らの間には修復不能な亀裂が入ってしまった。

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