池田屋事件 (13ページ)
「・・・千鶴、名前、そろそろ飯の時間だぜ」
「原田さん」
『わざわざありがとうございます』
そしていつも通りに夕食を食しているとなにやら急いでいるような源さんが入ってきた。大阪から手紙が届き、山南が怪我したとの報告だった。
「よかったぁ」
「よくねえよ」
命が助かっただけよかったと声に出す千鶴に対して厳しい意見が飛ぶ。
「真剣は片手で容易に扱えるものではない」
「あっ・・・」
なら山南さんは・・・どうなってしまうの?千鶴の胸に不安がよぎる。
「いざとなれば薬でもなんでも使ってもらうしかないですよね」
「馬鹿言ってんじゃねぇ。幹部が新撰組入りしてどうすんだよ」
新選組・・・?この人たちは新選組だ。ということはあの化け物たちについてのことか。たぶん、この辺が今、俺たちに聞かせられるギリギリの範囲ってところだろう。深く聞かないほうがいい。命にかかわる。そう思う名前とは裏腹に質問してしまった千鶴。
「あの、山南さんは新選組ですよね?」
「違う違う、俺たちが言う新撰組っていうのは」
ドカッ
原田が平助を殴り飛ばした。
「平助君!」
「やりすぎだぞ左之」
「・・・あぁ、悪かった」
「いや今のはおれも悪かったけど・・・」
結局ぎすぎすした雰囲気の中、食事は終了となった。
広間を出る刹那、聞こえてきた小さな声。それはきっと俺だけに聞こえた声。
「平助が言う新撰組っていうのは可愛そうな人たちのことだよ」