君が故 (152ページ)
間も無くして近藤が新選組に復帰した。
「いってらっしゃい、近藤さん」
沖田は最後まで悩んだが名前と一緒にいることを選んだ。
「何かあったら呼んでくださいね」
「あぁ、もちろんだとも」
僕はもう表立って動かない方がいい。平助みたいに裏で、影でひっそりとしておくべきなんだ。羅刹と成り果てた今では。なんて言い訳を並べて。ごめんなさい。近藤さん、ごめんなさい。僕はもう、新選組の剣なんて言えません。そんな資格なんて無い。近藤さんの小さくなる背中を見つめながら僕は力なく笑う。そして無性に名前ちゃんの顔が見たくなり、部屋へと訪れた。
「名前ちゃん寝てないと駄目でしょ」
『はい、それは分かっているのですが今寝てしまうと夜に起きてしまいまして』
「・・・仕方ないね、それは」
あ。そういえば。
「近藤さんが出て行っちゃったからこれから二人きりだね」
先生は忙しく、あまり療養所にいないことが多かった。なので実質的には沖田と名前の二人きりなのだ。沖田は羅刹と化しているため、昼夜逆転生活ではあるが。
『・・・沖田さんは、本当にこれで良かったのですか?』
名前は元々一人で生きてきた身。今更一人になったところでどうということはない。だけど沖田は。沖田は違う。
「これからの生活楽しみだねぇ」
名前は見当違いの返事を食らい、何も言えなくなってしまった。触れてほしくない話題だと察してしまったから。